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さかなの日記

MY「いいね!」の収容所(要するに人生の記録)

七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」感想 (注)ネタバレあり

去年の11月に書店で見かけた。表紙のカスヤナガトさんの絵が印象に残り、裏表紙のあらすじ「京都の美大に通うぼくが...」と「美大」というワードに惹かれて購入。自分が昔から美大に憧れて美大に入った影響なのか、美大生が出てくる話は好きだ。

しかし、買ったものの高校の時に比べ本を読む習慣が薄れたのか、2月になってようやく読み始めた。1月の中旬発表された映画化ということも理由にある。

同じく京都が舞台の小説、森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」のような大学生の青春ラブストーリーかなと思って読み始めたら、そういう内容とは違っていた。

 

あらすじはこんな内容だ。

ぼく」が一目惚れをした「彼女」は高嶺の花だった。ただ、そんな想い とは裏腹に、「彼女」は昔からの知り合いのように接してきて、すぐにふたりの距離は縮まっていく。ところが、「彼女」には人には言えない驚くべき秘密が あって…

 

「すでに12月が楽しみ!」ボロ泣き必至の恋愛小説『ぼく明日』福士蒼汰&小松菜奈で映画化! | ダ・ヴィンチニュース

 

登場人物

 南山高寿(みなみやまたかとし)...京都の美大に通う大学生。電車で一瞬目があった
可愛い女の子(福寿愛美)にひと目ぼれして出会ってすぐに告白。将来イラストレーターか作家になりたいと思っている。
福寿愛美(ふくじゅえみ)...容姿端麗の黒髪の女の子。美容の専門学校に通っている。南山高寿の告白を戸惑いながら受け入れる。急に泣き出す涙もろい性質。携帯電話をもっておらず門限が0時。

 

物語の流れ(ざっくり)

最初はよくある運命的な出会い。電車の中に彼女に出会い、一眼ぼれして告白し、無事恋人に。甘い恋人生活が始まる。呼び名の変化、初デートなど。

「はいはい、胸キュン路線系ね」と軽くポンポンと読んでいった。物語の途中、高寿が10歳の頃会った30歳の芸能人。その芸能人から箱を渡されるという回想。

高寿が動物園で描いたキリンの絵が愛美が教室に貼られるやつだと言い、実際にその通りになったこと、高寿がまだ誰にも見せていない小説のヒロインの名前を知っていたなど、予知能力者と思わせる場面が登場する。
タイムリープ系かな?」と思ってまた読んだ。

物語の中盤に愛美が残したメモ書き。それは日にちが逆順に書かれていた。そこには高寿との行動メモが近い未来のことが書かれていたのだ。高寿がそのメモを見た時、愛美から電話がかかり愛美の秘密が明かされる。高寿が10歳の頃受け取った箱がこの秘密のを証明する道具となる。

その秘密を知った高寿は戸惑い悲観したが、愛美と初めて出会ったときのことを思い出す。愛美の気持ち、自分の気持ちに気づく。そしてのこされた最後の日に向けて過ごして最終的には別れる。

エピローグは愛美が5歳の頃、祭りの火災に巻き込まれるが知らない男の人に助けてもらう。その男の人は悲しそうな目で愛美を見る。

物語の高寿との出会いに戻り、5歳のあの出来事を思い出す。電車に乗り、高寿を見て終わる。

 

こんな感じで終わる。物語のネタバレの本筋を極力書かない感じで書いた。ここからは愛美の秘密を種明かしする内容を書く。実は私も理解しにくい。あらすじの「きっと最初から読み返したくなる」の言葉の意味もわかった。じゃなきゃ理解できないYO!

2人の時間軸

愛美は別の世界の人間であり、そこからやってきた。愛美と高寿の流れている時間は異なっている。高寿のいる世界の目線で考えると、

高寿

4/13(2人の出会い)→→→→→→→→→→→→→→→→→→5/23(二人の別れ)

愛美

5/23(二人の別れ)→→→→→→→→→→→→→→→→→→4/13(2人の出会い)

つまり時間の流れている方向が逆なのだという。5年に一度、愛美は高寿の世界に行ける。2人の時間が交差できる。しかし最長で41日。それ以上いるといろいろトラブルが起きるようだ。そのため、愛美は高寿の世界にいる時はその世界の時間の流れと一緒に過ごすが、0時になると愛美が住んでいる時間軸と狂わないように「調整」が入る。そして愛美は高寿の世界で言う「昨日」の時間に進むのだ。これがなかなか難しい。さらに幼い頃の2人のエピソードを入れる。

 

高寿

5歳:35歳の愛美に救われる→10歳:30歳の愛美から箱を受け取る→15歳:不明→20歳:愛美と出会って恋をする→25歳:15歳の愛美に20歳に経験する恋の内容を説明する(推測)→30歳:不明→35歳:5歳の愛美を救う。

愛美

5歳:35歳の高寿に救われる→10歳:不明→15歳:25歳の高寿に20歳に経験する恋の内容を説明される(推測)→20歳:愛美と出会って恋をする→25歳:不明→30歳:10歳の高寿に箱を渡す→35歳:5歳の高寿を救う。

高寿 5歳→10歳→20歳→25歳→30歳→35歳

愛美 35歳→30歳→20歳→15歳→10歳→5歳

愛美の世界で見れば

愛美 5歳→10歳→20歳→25歳→30歳→35歳

高寿 35歳→30歳→20歳→15歳→10歳→5歳

こうやって書くと部分的だが納得するようなそうでもないような...?つまり禁断の恋っていうもの?違う時間軸通しを持つものが恋をすると結ばれることはないから悲しいことになってしまうということ?

(脳内整理しながら)愛美が5歳の時、高寿に救われてその時点で恋をしているのか?じゃなきゃ5年周期の時間旅行にまた行くはずがない。前回火災に巻き込まれたのだから一眼ぼれしなきゃ行かないでしょ。高寿にとっては愛美の成長を逆戻りしてみているから。あ、そっか。20歳の41日間の真ん中の日で2人の人生がちゃんと交わる日。対角線の交点からそこからどんどん離れるのか。愛美の秘密も「真ん中」の日に明かしていると思う。

4/13の出会いは高寿にとっては最初の日であり、愛美にとっては最後の日。5/23は高寿にとっては最後の日であり、愛美にとっては25歳の高寿から聞いた内容を元に20歳の高寿に出会う最初の日だ。

愛美が「真ん中」を過ぎると高寿の心が離れていき、高寿が「真ん中」を過ぎると愛美の心がどんどん高寿から離れていくのだ。

この物語では愛美が高寿のペースに合わせているので愛美の方が辛い。冒頭の涙は出会いを最後にもう2人は対等でいられなくなるからだ。どんどん逆再生していくのだから。もちろん高寿も愛美の秘密を知った以降は愛美がどんどん逆再生されるから辛い。

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41日間のことを最初と最後だけ図に表すとこんな感じ。対角線のようだ。

 

感想

ラブストーリーからファンタジーのある物語になっている。私は時間軸逆行する話初めて読んだから非常に驚いた。文も難しい表現使っていないからサクサクと読める。日頃小説読まない人にもオススメ。京都の地名がいっぱい出てきて、情景も出てくる。本の帯のように必ず泣くかどうかはわからないが読んだ人の心に必ず引っかかってまた読むと思う。

ただ時間軸などの物語の構造は理解するのに時間がかかる。特に2人の置かれた状況。本の最後に解説があるとよかった。

私が思った謎はなんで大人になった2人は過去の20歳の思い出のためにいろいろとセッティングしていたのか。だってこんな恋辛いじゃないか。時間が逆流しているなら大人になったところで合わせないように過去を変えることができるのに。恋をしている時点は2人は本当に恋をしていたのか。高寿はそうだけど愛美はすでに未来の高寿から恋に落ちることを聞かされているのだ。現に冒頭部分で愛美はそういうそぶりを見せないように演技をしていた。もしかして未来の高寿は「20歳の愛美は絶対恋に落ちる」とかそういう風は言わずただ出来事を軽く言っただけかもしれない。愛美が高寿を好きになる気持ちが本心じゃなくなってしまうし。

あと二人がそれぞれ40歳になった時どう思うんだろう。絶対片方はまだ生まれていないから、まだ生まれていない人に恋をしたということだ。亡くなった人みたいじゃないか。恋をするなら別に20歳じゃなくても15歳と25歳の時点から始められるけどなと思った。

とにかく読んだらしばらく人の心から離れない作品。切なくて救われない終わりだけど明るくも見えてロマンチックだと思う。これが一番良い終わりだと思う。

今年の12月に福士蒼汰くんと小松奈々ちゃんが演じるのでそれが楽しみ。この配役はとても合っていると思う。福士くんはあの表紙の絵がもろ福士くんだし奈々ちゃんはきれいだけど素朴な女の子っていうイメージだから愛美に良い。映像にすればあれこれ言った時間軸も見やすくなるのかな。また映画ならではの終わりにするのか。この小説と若干似ている、越谷オサムの「陽だまりの彼女」は小説だと切なすぎたが映画だと少し救われる終わりになっている。大筋は変えていなかったけど。「陽だまりの彼女」の映画の監督やった三木孝浩が「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の監督をやる。これは期待したい。本もまた何度でも読み返すと思う。

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)